美容業界に変革をもたらすCBDの可能性
C B D を正しく理解することからはじめよう
公開日:2020年11月17日
株式会社ビー・エイチ編集部
エステ業界でも注目されはじめているCBD。しかし、実際にはまだ本質がよく分からないという方も多いのでないでしょうか。日本では、CBDに関する法規制が厳しい一方、違法と合法のボーダーラインが正しく理解されないままに、ただ敬遠されているという面もあるようです。今回は、特別にCBDのスペシャリスト3名をお招きし、海外での状況や製品について、また日本での今後の可能性を考察してみたいと思います。
1.CBDを正しく理解する
ビー・エイチ 柴山(以下、柴山):皆様、本日はお忙しいなかありがとうございます。今回は、C B D(カンナビジオール)の製品特性や海外での状況、また今後の日本における可能性ついて、お話をお聞かせいただければと思います。まず最初に、CBDをご存知ない読者の方も多いと思うで、CBDの説明からお願いしたいと思います。
鴻上彩様( 以下、鴻上さん):CBDは、国によって規制や定義が異なります。とりわけ日本と諸外国は大きく法規制が異なるため、ここではCBD製品の一般消費者への普及が最も広く、CBD先進国と言われている米国の事例をもとにご説明したいと思います。
柴山 :はい、お願いします。
鴻上さん :とても簡単に説明しますと、米国では、大麻の総称を「カンナビス」といい、その内、THC(テトラヒドロカンナビノール)が0.3%以上含まれているものを「マリファナ」、0.3%未満のものを「ヘンプ」と呼んで区別しています。
柴山 :日本では、どのような場合に違法になるのでしょうか。
鴻上さん :簡潔に説明しますと、「成熟した茎と種子をベースに、THCが含まれないCBD」という基準が日本にあります。この基準に沿わないものは、違法になります。日本はヘンプを農作物として育てることに強い制限があるため、基本的にCBDは輸入するしかできないのですが、このような特殊なルールの下にある国はあまりないため、日本用に特別に作られた原料や製品でなければ、概ね違法ということになります。
柴山 :なるほど、良くわかりました。日本で使用できるCBD製品はヘンプの茎または種子から採れた、CBDのみが配合されている製品ということですね。
渡辺 蘭 様(以下、渡辺さん):CBDのみの製品を「CBDアイソレート」と呼びます。また、ヘンプにはCBDやTHC以外にも100種子を超えるカンナビノイド(大麻に含まれる化学物質の総称)が含まれており、その全てが含まれているものを「フルスペクトラム」呼び、もちろんこれには、THCも含まれます。さらにCBDに加え、一部のカンナビノイドが含まれているCBD製品を「ブロードスペクトラム」と呼んでいます。
鴻上さん :現状、CBD商品はネット通販などで手軽に購入できますが、先にも申し上げたとおり日本国内では、茎または種子から作られた原料以外は認められないこと、さらにわずかでもTHCが含まれるものは違法です。購入の際には、メーカーや輸入業者の情報などをしっかりと確認することをお勧めします。
2.米国CBD商品の普及状況とトレンド
柴山 :米国では、今どのようなCBD商品が人気なのでしょうか。
鴻上さん :エディブルやC B Dウォーター、CBDジュースなどの市場拡大がめざましいですね。
柴山 :エディブルとは何ですか?すみません、不勉強で。
鴻上さん :菓子類です。チョコやグミなど、CBD配合のエディブルは非常にバリエーション豊富です。
柴山 :菓子ですか!CBDというと、ティンクチャー(オイル)のような商品をイメージしていましたが、かなり身近なものとして普及しているんですね。
中村松美様(以下、中村さん):ティンクチャーなどは、もっと効果を得たい人が積極的に購入するイメージですね。そうではない、一般の方を対象にした商品が最近では、数多く販売されています。
渡辺さん:米国では気兼ねなくカジュアルにCBD商品を使用できる環境が加速していますね。値段も購入しやすいものが多いですしね。
鴻上さん:バリエーションは本当にたくさんあります。クリームやバーム、ヘア・ケアやバスソルトもありますし、最近では、口腔内にスプレーするタイプのものも発売されました。PMS(月経前症候群)やスリープなど、用途別に何種類も販売されていて、ティンクチャーなどを使用するよりカジュアルなので、人気が出始めていますね。
渡辺さん:「CBD製品を使ってます」的なイメージのものではなく、スマートに使用できる製品の人気が高いですね。
鴻上さん:あとは、ストリップスと呼ばれる腔口内に貼るフィルム形状のものも出てきています。
中村さん:オブラートみたいなイメージの商品ですよね。
鴻上さん:そうですね。一枚ずつ、個包装になっていて、口腔内に貼りつけるように使用することでCBDが徐々に溶け出し時間をかけて粘膜吸収されるので、ロスとかベガスでは、今非常に人気のある商品です。
柴山 :化粧品では、どのような商品が人気なのでしょう。
中村さん:フェイスマスクやリップクリームは、非常にポピュラーで、入手しやすく人気がありますね。色々なブランドの商品が販売されています。
鴻上さん:CBDの特徴のひとつとして、抗炎症作用があるので、リップクリームは商品として理にかなっていると思います。これから寒くなる季節には欠かせません。
C B D オイル( ティンクチャー)は主に、ドロッパー
から舌下に垂らして、使用するCBD配合オイルのこと。
3.海外での規制と厳格な管理体制
柴山 :海外でのカンナビスの現状についてお聞きしたいのですが、渡辺さん、オーストラリアはいかがですか。
渡辺さん:オーストラリアは、3年前に医療用大麻が解禁されたのを機に認知度が一気に高まりました。最近法改正されて、一部の州では所持は合法になりましたが、公共での使用は禁止です。オーストラリア全般でいうと、一般の人がもつ大麻に対する印象は日本ほどネガティブではないですね。
オーストラリアの医療用大麻解禁の意義は非常に大きかったと思います。子供の「てんかん」が改善され、心の底から喜ぶ家族の姿を数多くみてきました(渡辺さん)。
柴山 :医療で使用されるようになると認知度は高まりますね。渡辺さんは、米国にもよく行かれているようですが。
渡辺さん:コロラドに行った時の話ですが、扁桃炎にかかった現地の知人がディスペンサリーで、小さいキャンディを処方してもらい、本当に酷い状態だったのが、みるみる改善したんです。THCが微量配合されていたと思いますが、あんなに小さなキャンディひとつで、こんなに効くのかと驚きました。
柴山 :やはり、微量でもTHCが配合されていたほうが、効果は高まるんでしょうか。もちろん、日本では違法ですが。
渡辺さん:アイソレート(CBD単体)よりも、アントラージュ効果といって、単一のカンナビノイドを摂取するより、多様なカンナビノイドが含まれている方が大きな効果を得られると言われています。CBDの効果をより高めてくれるイメージですね。
柴山 :鴻上さん、米国とカナダでは、いかがでしょうか。
鴻上さん:カナダでは、まだ規制をかけているので、一般の方が手軽に購入できる環境ではありません。米国は、州によって法規制が異なり様々ですが、CBD製品の種類は本当に豊富に出ているので、そういう意味で世界で一番の先進国だと思います。
柴山 :ヘンプを育成する農地や原料製造メーカーは、州の認可制とお聞きしました。
鴻上さん:農地の認可もちろん、そこで育成されるヘンプの「種子」まで基本的に、国や州に登録しなければなりません。このため、私たちはその「種子」の由来を知ることができます。「種子」は、どこの州が認可し、どういう内容のものなのかが、厳格に管理されているため、トレーサビリティも担保されています。実は「種子」の段階で、どの程度CBDが抽出できるかが分かるので、農家の方々はそれをみて種子を選び育成しています。
日本に輸入予定の原料や製品が、日本の法律に準じていることに加えて、その海外の企業が、公に製造認可を得ている企業か、GMP対応など安全性の高い工場なのか、ヘンプは農地や種が認可されているかなどを含めて、深い検証が必要(鴻上さん)。
柴山 :日本国内でCBD原料を作ることは、禁止されています。そうなると、日本のメーカーがCBD製品を製造する場合は、輸入した原料をもとに製品化することになるわけですね。
鴻上さん:そのとおりです。日本の法律に遵守し、日本用に製造された海外のCBD原料を輸入して、それを元に日本のOEM企業が製品化。そして日本のユーザーは日本向けに製造されたものを使用するのが法的リスクも無くベストだと思います。
4.国内エステサロンでの普及の可能性
柴山 :米国のエステサロンなどでは、CBD配合の化粧品が使われているのでしょうか。
中村さん:有名な高級ホテルなどは、『CBD SPA』というネーミングで、積極的にプロモーションしていますね。高いリラックス効果と美肌効果が支持されていると聞いています。米国ではCBD配合の化粧品はポピュラーな存在ですので、サロンでも積極的に使用されていると思います。
柴山 :日本のエステサロンでCBD商品が使用されるとしたら、どういうカテゴリーの商品の可能性があると思いますか。
鴻上さん:日本で販売されているか分からないですが、CBD配合のエッセンシャルオイルなどは、日本のエステサロンでも利用しやすいのではないでしょうか。ディフュザーに入れて使用することで、施術中に高いリラックス効果が得られるというメリットもありますね。
中村さん:エッセンシャルオイルなら、マッサージ用のキャリアオイルにブレンドして使用することで、経皮吸収によって、更にリラックス効果も高まります。より高い効果を得たい方は、CBDオイルそのものをブレンドする方法もありますね。
渡辺さん:CBDは、抗炎症作用があるため、ニキビへの効果は認められているので、フェイシャルサロンでのスキンケア商品へのニーズも高そうですね。
中村さん:サロンのスキンケアで最初に導入する場合、フェイスマスクは非常に良いと思います。手軽にCBDの効果をすぐに体感できますしね。
スキンケアで最初にCBD商品を導入する場合、手軽にCBDの効果を体感できるフェイスマスクはお勧めです。(中村さん)。
柴山 :ボディ系のマッサージクリームなどは需要がありそうですか?
中村さん:CBDは、カンナビノイド受容体CB2に作用します。CB2は、リンパ系も含まれますので、リンパマッサージなどに使用するマッサージクリームなども良いと思います。
渡辺さん:マッサージ系のエステサロンは多いので、ニーズが高そうですね。
鴻上さん:CBDは、抗炎症効果があり、筋肉痛にも効果を発揮します。私もトレーニングのアフターケア用のCBDクリームを使用していますが、とても速効性があります。米国では、ボディケア用のクリームなどは、アスリートを起用してブランディングしている商品が多いですね。
柴山 :CBDを正しく理解し、その効果を知っていただくことで、近い将来、日本のエステサロンに広く普及していくであろう可能性を感じました。皆様、本日はどうもありがとうございました。
株式会社JBTY 代表取締役
鴻上 彩 さん
大学卒業後、米国の外資系金融に勤務。ニューヨークやロンドンなど仕事で海外を訪れる機会が多く、時差との戦いを強いられる中、CBDの存在を知りその効果に魅了されたことをきっかけに、自身のヘルスコンシャスな生活にCBD製品を取り入れつつ、独自に研究を始める。現在は、米国とカナダに拠点を置くヘンプ事業者へのコンサルタントとして従事。海外のCBD関連事業者や、研究者、弁護士、CBD専門のOEM会社などのビジネスパートナーと情報交換を行うため、新しい製品動向などをウォッチできる環境にある。海外を拠点にしているが、日本国内では、CBDブランドの新規参入を計画している企業やOEM企業に対し、アドバイザーとして参画している。
株式会社MATUMI Office Inc. 代表取締役
中村 松美 さん
1983年、株式会社メディカライズを設立。大手製薬会社とのヒアルロン酸技術契約をはじめ、美容と健康に科学的な視点から多角的にアプローチを続けて同社グループを拡大。1995年から化粧品業界に携わるようになり、2003年、韓国コスメで爆発的人気を博していたBBクリームを日本に紹介したことをきっかけに、その後のBBクリーム国内市場を牽引してきた。2009年に韓国ハンスキン社、2011年に韓国ネイチャーリパブリック社と専属契約。韓流スターのチャン・グンソク、人気女性グループKARAのメンバーをモデルに起用して売り切れを続出させるなど、日本国内における韓流コスメブームの立役者でもある。2015年には新たに株式会社MATUMI Office Inc.を設立。化粧品の製造からPR、また美容ブランドの立ち上げに関するコンサルティングなどを得意とする。アメリカをはじめとする海外の化粧品やエステティックサロンなどの事情にも精通。また、最近ではCBD商品の開発にも携わる。
株式会社cochi
渡辺 蘭 さん
幼少期をアメリカで過ごし、立教大学経営学部卒業後に日本とオーストラリアで食、美容、健康など人の生活に深く関連する事業でポートフォリオキャリアを築く。特にオーストラリアでは、CBD製品に関する研究などを精力的に行う。そんながむしゃらに働く日々の中、体に起こる慢性的な不調に悩まされたことがきっかけとなり、現代生活から起こるミネラル不足に着目。『一人ひとりの女性が自分をもっと好きになれるように。』をテーマに、約2年間の準備期間を経て2018年11月に多種類の天然ミネラルを手軽に摂取することのできる『チュチュピュアミネラルサプリメント』の事業を開始し、国産原料と国内生産にこだわった高品質なサプリメントの製造に成功。現在では国内外を問わず、芸能、美容関係を始めとした多くの女性から支持をされており、使用者からは慢性的な不調が改善したと多くの喜びの声が届いている。
聞き手 株式会社ビー・エイチ
取締役副社長 柴山 靖文